2000年4月に読んだ本



クライシスF 井谷昌喜 1998.03.25 第1刷 光文社 ISBN 4-334-92294-5

第1回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。著者は新人とはいえ、読売新聞記者などを経験し、現在も在職中の大ベテラン。
世界的な2大企業による遺伝子組み替え植物・食品中の、蛋白質が作用して人体に悪影響を及ぼす「奇病」を追って行くという作品。現代の遺伝子組み替え技術に対する安全性に対する疑問が投げかけられている(と思う)。一気に読める作品だが、文体が多少読み辛い気もする。
日本ミステリー文学大賞新人賞はまだ歴史の浅い賞だが、現在第3回の受賞作「サイレント・ナイト」(高野裕美子)が書店に並んでいる。未読だが、こちらも翻訳家の小説デビュー作。

(2000.04.11)


ぼくらの時代 栗本薫 1978.09.12 第1刷 講談社 ISBN 4-06-130581-6

またまた乱歩賞受賞作。受賞当時、栗本薫は25歳。
当時の時代背景を強く感じさせる作品。ロックバンドをやっている大学生3人が体験した事件を、記録してたものという体裁を取っている。
東野圭吾の放課後でも感じたんだけれど、女子高生の感じ方って本当にこんなものだったのだろうか。どうしても違和感を感じてしまう。
引き続き「ぼくらの気持」も読んでみよう。

(2000.04.13)


ぼくらの気持 栗本薫 1979.06.30 第3刷 1979.08.27 講談社 ISBN 4-06-130623-5

上の「ぼくらの時代」の続編。大学生だった3人のうち、一人は出版社に就職し、一人は卒業せず未だ学生、そして、「ぼく」は卒業したものの売れないライターという設定。
前作で登場した警部補も再登場する。少し成長した登場人物がまたしても事件に巻き込まれて行く。ミステリーとはなにかを解説?してくれている作品といえるかな。

(2000.04.16)


ぼくらの世界 栗本薫 1984.10.08 第1刷 講談社 ISBN 4-06-201541-2

「ぼくら」三部作の締めくくりとなる作品。2作目から5年後にようやく出版された。設定としては、第1作の事件を小説として「ぼく」がシャーロック・ホームズ賞に応募して入選したことから事件が起こる?というもの。
エラリー・クイーン、レックス・スタウトの作品のトリックがストーリーに使われているといってよいのかな。冒頭にトリックがばらされると書いてあるから。
これをもって「ぼくら」シリーズは終わりらしい。このさきは、「ぼくら」ではなくなってしまうからなのか。作者自身が、その時代を通り過ぎてしまったからなのか。

(2000.04.18)


UNKNOWN 古処誠二 2000.04.05 第1刷 講談社 ISBN 4-06-182120-2

第十四回メフィスト賞受賞作。自衛隊内部で盗聴機が発見され、その犯人探しが極秘裏に進められるというストーリーだが、話は飛躍せずこじんまりとした作品。でも、そこが面白い。
なんでも、シリーズになるという噂もあるので、次回作にも期待したい。登場人物がかっこいいと思う。

(2000.04.21)


亡国のイージス 福井晴敏 1999.08.25 第4刷 1999.11.08 講談社 ISBN 4-06-209688-9

乱歩賞受賞作(Twelve Y.O.)を後回しにして先にこちらを読んだ。UNKNOWNに続いて自衛隊ネタ。息をつかせぬ迫力に引き込まれて行く、その一方、緊迫感に息をのんでしまう。海の男の世界ってやっぱりかっこいいなあ、と思わせられる作品。2段組みで654頁は少々ハードだが。
自衛隊ネタでもUNKNOWNがあまりむちゃをしていないのに対して、こちらは相当むちゃをしている作品。自衛隊というか、軍隊というかをテーマにするなら、いっそのことこちらの方が読んでいるぶんには面白いかな。ラストは泣けてくる気もする半面、甘い感じもするが。
日本推理作家協会賞受賞

(2000.04.29)