2000年6月に読んだ本



華やかな死体 佐賀潜 1962.09.10 第1刷 講談社

千葉地検の検察官を主人公にした作品。著者自身千葉地検の検察官だったことがあるので、その経験もいかされているのだろう。東京地検への栄転を願いながら、立て続けに無罪判決を受け、退官しようと考えていた同僚にその道を奪われてしまう。
殺人事件の一審無罪の後、新たな証人が現れるものの、時既に遅く、控訴はなされず無罪が確定してしまう。黒を白と言いくるめる弁護士に対する批判か、それとも、検察に対する批判か。
結末が結末なので、多少の後味の悪さは残るものの、おもしろい。
第八回乱歩賞受賞作。

(2000.06.01)


夜の眼 北方謙三 2000.05.15 第1刷 講談社文庫 ISBN 4-06-264867-9

正直なところ、こういう作品をどう形容したらいいのだろうか。恋愛小説というのだろうか。
同時に複数の女性を愛しながら、女性はセックスと食事の相手でしかない。そんな中年の恋愛小説の作家が主人公。でもカッコイイんだな。
たまには、こういうのも悪くはないか。

(2000.06.03)


標的走路 大沢在昌 1986.08.25 第1刷 双葉文庫 ISBN 4-575-50095-X

長い間探し求めていた本がやっと手に入った。文庫本一冊には少々高いかなとも思う値段を出してしまった気もするが。
大沢在昌の、雑誌掲載などは別として、最初に出版された本。尤も最初に出たのは新書判だが。初期の佐久間公シリーズも、その他の作品は角川文庫に収録されており、容易に入手できるが、この作品だけは、双葉社が版権を手放さないようで入手困難。しかも、増刷予定なしとのこと。
大沢在昌のその後の作品を読んでいると、どうしようもなく甘い作品なのだが。
やっと手に入れることができた嬉しさのあまり、3回も読み直してしまった(計4回)。さらに他の佐久間公シリーズも読み直したりして。

(2000.06.07)


大いなる幻影 戸川昌子 1962.09.10 第1刷 講談社

先の、「標的走路」より先に読み始めたのだが、「標的走路」に熱中するあまり、この作品を読み終えるのに時間がかかってしまった。
京都を舞台にした作品で、京都弁が印象的に使われている。地の文も京都弁で読んだほうがおもしろいかもしれない。なんとなく、殺人の動機が弱いというかわかりにくい。つい、前のページを探してしまった。読んでいる途中では、あまりおもしろくもなかったのだが、読み終わってからおもしろかったなあと思わせられる作品。
第八回乱歩賞受賞作。

(2000.06.10)


羊たちの沈黙 トマス・ハリス 1989.09.25 第48刷 2000.05.10 新潮文庫 ISBN 4-10-216702-1

最近、「ハンニバル」が話題になっているので、読み始める前にこれを読み返しておこうと思ったのだが、どうしても見つからない。しかたなく買いなおした。再読なので、すらすら読めるだろうなんてことを思ったのが甘かった、そう思ったこと自体、この作品の内容を忘れていた証拠だろう。随分と時間がかかった。
「羊たちの沈黙を超えた」というようなキャッチフレーズの本を見かけるが、それ程この作品は、サイコ・サスペンスというジャンルで有名になってしまった作品。好き嫌いはあると思うが、読んでみる価値はあると思う。

(2000.06.18)


ローズガーデン 桐野夏生 2000.06.15 第1刷 講談社 ISBN 4-06-210187-4

村野ミロシリーズのサイドストーリーを集めた短編集。長編よりは読みやすいと思う。書き下ろしで収録された表題作は、ミロの元夫、博夫が登場する。
その他にも主要な人物が登場するが、全体に軽い感じですらすら読めるだろう。現在連載中の長編「ダーク」があまり進展しないので、いらいらしていたところにはちょうど良い。そういえば、他にもシリーズの短編があるが、これもいずれ短編集に収録されるのだろうか。

(2000.06.20)


予知夢 東野圭吾 2000.06.20 第1刷 文藝春秋社 ISBN 4-16-319290-5

これまた連作短編集だが、各作品に第1章から第5章まで当てられており、全体として何かを表現しようとしているのだろうか。
オカルトじみた事件を追う刑事の友人で、物理学の研究者が謎?に光を当てるという構成。最後にオカルトめいた謎が残されるのだが。
すらすら読める作品。

(2000.06.21)


左手に告げるなかれ 渡辺容子 1996.09.10 第1刷 講談社 ISBN 4-06-208385-X

元証券会社の女性総合職、不倫で辞職、現在は保安士をしている女性が主人公。元の、不倫相手の妻が殺された事件で、容疑者とされたことから犯人探しを始めるというもの。
作品の扱う世界はそれほど広い物ではないのだが、展開はどんどん広がって行く。最後は少々手を広げ過ぎのような気もするし、サイドストーリーに結末がないのも不親切かもしれない。でも、結構楽しめました。

(2000.06.26)