2000年7月に読んだ本



フェニックスの弔鐘 阿部陽一 1990.09.10 第1刷 講談社 ISBN 4-06-205104-4

今や死語となってしまった感もあるが、ペレストロイカ時代の米ソ東欧を舞台にした作品。ソ連の陰謀を装ったアメリカ国内で起こった航空機事故。毒ガスによって引き起こされた事故であった。やがて、その陰謀が世界を巻き込んで行く。
といった作品なのだが、少々無茶しすぎの感が無きにしも非ず。スケールの大きさはおもしろいのだけれど。
第36回乱歩賞受賞作。
☆☆

(2000.07)


ナイト・ダンサー 鳴海章 1991.09.10 第1刷 講談社 ISBN 4-06-205578-3

東京発成田行きの民間航空機に、手荷物として預けられた細菌。その細菌はジェラルミンを腐食させる。日本とアメリカでほぼ同時に発見されたこの細菌が、日本国内に留まることを、おもしろくないと思うアメリカは、航空機を撃墜しようとする。ナイト・ダンサーが出動する。
このナイトダンサーというのが、自衛隊内にいた。それを阻止しようとする自衛隊機との空中線などが描かれる。
手を広げた割には、結末に収束勘がなく。中途半端に終わってしまったような気もするが。
☆☆

(2000.07)


標的走路 大沢在昌 1986.08.25 第1刷 双葉文庫 ISBN 4-575-50095-X

長い間探し求めていた本がやっと手に入った。文庫本一冊には少々高いかなとも思う値段を出してしまった気もするが。
大沢在昌の、雑誌掲載などは別として、最初に出版された本。尤も最初に出たのは新書判だが。初期の佐久間公シリーズも、その他の作品は角川文庫に収録されており、容易に入手できるが、この作品だけは、双葉社が版権を手放さないようで入手困難。しかも、増刷予定なしとのこと。
大沢在昌のその後の作品を読んでいると、どうしようもなく甘い作品なのだが。
やっと手に入れることができた嬉しさのあまり、3回も読み直してしまった(計4回)。さらに他の佐久間公シリーズも読み直したりして。
☆☆☆

(2000.06.07)


大いなる幻影 戸川昌子 1962.09.10 第1刷 講談社

先の、「標的走路」より先に読み始めたのだが、「標的走路」に熱中するあまり、この作品を読み終えるのに時間がかかってしまった。
京都を舞台にした作品で、京都弁が印象的に使われている。地の文も京都弁で読んだほうがおもしろいかもしれない。なんとなく、殺人の動機が弱いというかわかりにくい。つい、前のページを探してしまった。読んでいる途中では、あまりおもしろくもなかったのだが、読み終わってからおもしろかったなあと思わせられる作品。
第八回乱歩賞受賞作。
☆☆☆

(2000.06.10)


羊たちの沈黙 トマス・ハリス 1989.09.25 第48刷 2000.05.10 新潮文庫 ISBN 4-10-216702-1

最近、「ハンニバル」が話題になっているので、読み始める前にこれを読み返しておこうと思ったのだが、どうしても見つからない。しかたなく買いなおした。再読なので、すらすら読めるだろうなんてことを思ったのが甘かった、そう思ったこと自体、この作品の内容を忘れていた証拠だろう。随分と時間がかかった。
「羊たちの沈黙を超えた」というようなキャッチフレーズの本を見かけるが、それ程この作品は、サイコ・サスペンスというジャンルで有名になってしまった作品。好き嫌いはあると思うが、読んでみる価値はあると思う。
☆☆

(2000.06.18)


ローズガーデン 桐野夏生 2000.06.15 第1刷 講談社 ISBN 4-06-210187-4

村野ミロシリーズのサイドストーリーを集めた短編集。長編よりは読みやすいと思う。書き下ろしで収録された表題作は、ミロの元夫、博夫が登場する。
その他にも主要な人物が登場するが、全体に軽い感じですらすら読めるだろう。現在連載中の長編「ダーク」があまり進展しないので、いらいらしていたところにはちょうど良い。そういえば、他にもシリーズの短編があるが、これもいずれ短編集に収録されるのだろうか。
☆☆☆

(2000.06.20)


予知夢 東野圭吾 2000.06.20 第1刷 文藝春秋社 ISBN 4-16-319290-5

これまた連作短編集だが、各作品に第1章から第5章まで当てられており、全体として何かを表現しようとしているのだろうか。
オカルトじみた事件を追う刑事の友人で、物理学の研究者が謎?に光を当てるという構成。最後にオカルトめいた謎が残されるのだが。
すらすら読める作品。
☆☆☆☆

(2000.06.21)


左手に告げるなかれ 渡辺容子 1996.09.10 第1刷 講談社 ISBN 4-06-208385-X

元証券会社の女性総合職、不倫で辞職、現在は保安士をしている女性が主人公。元の、不倫相手の妻が殺された事件で、容疑者とされたことから犯人探しを始めるというもの。
作品の扱う世界はそれほど広い物ではないのだが、展開はどんどん広がって行く。最後は少々手を広げ過ぎのような気もするし、サイドストーリーに結末がないのも不親切かもしれない。でも、結構楽しめました。
☆☆☆☆

(2000.06.26)